なんかいいよね花巻

観光地としてはもう一息だけど、知ってる人ははまってしまう花巻の小さな魅力の積み重ね。

注文の多い料理店【序文】

宮沢賢治の作品を、どれくらい知っていますか?


宮沢賢治をあまり知らない人でも「雨ニモマケズ」と「銀河鉄道の夜」は知っているという人が多いですね。


それと同じくらい有名なのが「注文の多い料理店」かな。国語の教科書に載ってたりしたからね。

宮沢賢治に馴染みがない人でも、「なんかあれでしょ?猫に食べられるだかなんかでしょ?」くらいは記憶に残ってるようです。


注文の多い料理店」が、前述の「雨ニモ~」や「銀河鉄道の~」と大きく異なるのは、唯一、宮沢賢治生前に出版された短編集に収録されているということ。


つまり、今ではかなりの数の作品が世に出ているけれど、そのほとんどは、没後に弟によって発表されたものなので、宮沢賢治自身が出版を知っている作品はほんのわずか。
そして、「注文の多い料理店」がそのわずかなうちのひとつ。

この短編集には全部で9つの物語が収録されています。そして、「注文の多い料理店」が短編集のタイトルに選ばれています。



ただね、意外と花巻の人にも知られていないのが、この短編集の【序文】の存在。

知っている人にとっては、「え?序文なんて有名中の有名でしょ!!」って思えるんですけどね、やまなしの年代は、小学校中学校と宮沢賢治教育を受けてきたにもかかわらず(笑)、知らない人が多い。

ま、事実やまなしも大人になるまで知らなかったもん。


さて、その【序文】とは、今でいう本の【まえがき】みたいなものですね。本を読んでくださるにあたって、みたいな挨拶ですよね。

ただ、やまなしはこの【序文】が大好きで大好きで、こんなに美しく気高く媚びない文章というのもなかなかないなと思ってます。

知らない人にはぜひ読んで欲しいなと思ったので、青空文庫さんがまとめていたものを貼らせていただきます。(https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/43736_17656.html

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わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃(もも)いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
 またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗(らしゃ)や、宝石いりのきものに、かわっているのをたびたび見ました。
 わたくしは、そういうきれいなたべものやきものをすきです。
 これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹(にじ)や月あかりからもらってきたのです。
 ほんとうに、かしわばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかったり、十一月の山の風のなかに、ふるえながら立ったりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんとうにもう、どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを、わたくしはそのとおり書いたまでです。
 ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでしょうし、ただそれっきりのところもあるでしょうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでしょうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。
 けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾(いく)きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません。

  大正十二年十二月二十日 宮沢賢治

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ほんとうのたべものを見つけて、お腹いっぱいになれる人になりたいです。

んでばまず。